ウィリアム・サローヤンの『ママ・アイ ラブ ユー』
ウィリアム・サローヤン(1908–1981)は、20世紀のアメリカ文学において、独自の人間味と透明感を貫いた小説家・劇作家
売れっ子女優を志してニューヨークへと向かう母親、ママ・ガールと、それに同行する九歳の娘、キラキラヒメ(彼女の父親がそう呼ぶ)の軌跡を描いた物語。
母親が華やかな成功を夢見る傍らで、キラキラヒメは「ピッチャーになる」という独自の志を抱いています。
キラキラヒメも舞台に立つことになり、ママ・ガールと五番街のホテル、ピエール二一〇九号室からともにヒットを目指す。
離れてパリに暮らす父親や兄のピートとの間に交わされる会話からは、家族が離散していてもなお損なわれない親愛の情が読み取れる。
サローヤンの文章が素敵なのだけど訳も魅力的。 「もっと静かに、ハイ」
原書の愛称Twinkをすべてカタカナで表記した「キラキラヒメ」という訳語は、彼女の無垢な精神性を象徴しています。常に平かな心を保ち、周囲の状況に左右されることなく、自らの思考を自然にそのままに言葉にするキラキラヒメの振る舞いは、ありのままでいることの心地よさを感じさせてくれる。
彼女の視点によって活写されるニューヨークの街並みは、夢を追う人々の喧騒と静謐さが共存しています。キラキラヒメのように自分を偽らず、落ち着いて世界と向き合うことが可能であるという事実は、静かな希望となって心に響く。

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